「八洲学園大学実地研修で、カンボジアへ!」
家庭教育課程 専任講師 江田英里香
八洲学園大学生涯学習学部家庭教育課程の江田英里香(専任講師)です。昨年(平成18年)9月に学外実地研修でカンボジアに行って参りましたので御報告いたします。
今回の実地研修の目的は、「カンボジア王国の教育事情に加えて、カンボジアの社会・文化・歴史について理解を深めること」でした。参加学生3名、理事長、教員2名、合計6名で、7日間を共にし、暑い中、それ以上に生命力のみなぎる現地の人たちと交流を深めてきました。
カンボジアは、東南アジアのタイとベトナムの間に位置し、世界遺産であるアンコール遺跡群を持つ、緑豊かな歴史のある王国です。同時に、カンボジアは、20年以上に亘る内戦を経験し、今でも爪あとを残している貧しい国でもあるのです。特に教育分野においては、ポルポト政権時代に失われた教育制度と人材のために、今でもなお、国内の全ての子ども達が教育へのアクセスを得られてはいません。また、家庭においても、貧しいがために子どもに十分な教育を受けさせることができない、貧しいがために最愛の我が子を手放さなければならない、という状況にあります。
今回の研修では、(特活)NGO活動教育研究センターが実施している「移動図書館」に参加しました。カンボジアではほとんどの小学校に図書館設備がありません。そのため、子ども達が絵本に触れる機会はほとんどなく、読み物といえば学校から貸し出される教科書程度しかないのが現状なのです。「移動図書館」では、カンボジア国内で販売されている数少ない絵本と共に、カンボジア語に翻訳された日本の絵本も子ども達に届けられています。また、読み聞かせや読書の時間以外に、絵を描いたり、様々なアクティビティもあります。参加した学生さんを待ち構えていたのは、「移動図書館」がやってくるのを待っていた沢山の子どもたちでした。「移動図書館」がやってくると子どもたちは図書館の準備に大忙しです。民家の庭先にマットを敷き、バケツに水を汲んできて、順番に手を洗い、「移動図書館」のスタッフに出席カードを渡し、マットの上で待つのです。八洲学園大学の学生さんも、一緒に図書館の準備をしました。また、絵本の絵を日本語で説明したり、一緒に絵を書いたり、日本から持ってきた折り紙や風船で子ども達を驚かせていました。
次に訪れたのが、CYK(幼い難民を考える会)が運営・支援している織物訓練所と保育所です。織物訓練所では、戦争や内乱で破壊された伝統織物を復興させ、女性達に自立を促すために、収入の安定しない農家の女性達に織物を指導しています。また、カンボジアでは就学前教育は、他の教育段階に比べてプライオリティも低く、ほとんど実施されていないのが現状なのですが、小学校での教育活動に就学前教育はとても効果的であるということから、CYKでは保育を推進しているのです。参加した学生さん達は、CYKの織物訓練生や訓練所近辺の民家で織物をしている女性達に直接インタビューをし、実際にカンボジアの織物にも触れました。
さらに、現代のカンボジアを知るためには、まずカンボジアの歴史を学ばなければなりません。ポルポト政権時代の残虐な様子が痛いくらいに伝わってくるツールスレーン博物館、カンボジアが抱える負の遺産である地雷を除去しているカンボジア人アキ・ラ氏の自宅である地雷博物館を訪問し、世界遺産に登録されているアンコール遺跡群にも足を運びました。現在のカンボジア国王が暮らすカンボジア王宮にも訪れました。
盛りだくさんのカンボジアでの研修でしたが、私の期待を見事に裏切ったことがありました。「きっとアンコールワットを満喫してくれただろうな!」と思っていたのですが、この研修で一番楽しかった事を聞いたところ、「カンボジアの子どもたちと触れ合うことができたこと!」ということでした。もちろん、研修のメインは移動図書館やCYK訪問ではありましたが、アンコールワットは誰もが行きたいというところですから、うれしい驚きでした。
学生さんの反応は、様々で、カンボジアの現在の社会を見て、政治に関心を持たれた方もいました。また、他の学生さんは、カンボジアが農業国であることも加えて農業について、カンボジアの子どもたちと触れ合って子どもたちの教育に興味をもってくれました。
いづれにしても、カンボジアについて興味を持ってくれたことは、カンボジアに関わってきた私としてはとても嬉しいことです。世界には先進国・途上国と様々な国があり、様々な事情を抱えていますが、まず、それぞれの国がそれぞれの国を理解することから平和が始まるのだと思います。そういう意味で、そこに暮らす人たちを知ること、そして、興味を持つことで、平和の輪が広がっていけば・・・と願っています。
今回の研修では、学生さんはその目的を超えて、様々な事を学んでくれました。これからもまた、研修を継続し、学生さんに視野を広げてもらいたいと願っています。
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