「優しさと希望がもてる学校へ=特別支援教育が目ざすもの=」
やしま学園高等専修学校校長 谷口 充
わが校がLDを中心とする生徒さんに合わせた学校づくりを初めて10年が経過しました。「LDを中心とする」としたのは純粋な意味でのLDという人は少なく、むしろ多動や対人関係につまづき、学校生活が苦しくて、友達もできないという人が多く見受けられたからです。今もその傾向は続いています。
さて、この10年間でLDは最終答申が出され、続いて特殊教育のあり方が論議され、やがて特別支援教育となり、ついには養護学校が特別支援学校に変わり、地域の(核)センター化となりつつあります。
また、今までは通常学級に在籍し、何の教育的支援もなかったLDやADHD等の生徒に対しても特別支援学級での就学が認められ、わが国の特別支援教育を受ける児童生徒はバブル期の0.9%から7%以上に大幅に増加しました。
しかしながら、これはあくまで小・中学校(義務教育)での数値であり、後期中等教育である高等学校については、これからの課題となっています。
実際に本人や保護者もわからずに基礎学力不足や基本的生活習慣ができていないや落ちつきがなく短気といわれ結局のところ不登校となりそれでも全日制学校にと進学し途中でリタイアする生徒が数多くいるのはみなさんが知っている通りです。
私たちは、この教育を既に10年前から実践してきました。その結果として生徒や保護者等が望んでいるのはけっして学力や就労の問題ではなく、誰もが輝く青年期として優しさと希望がもてる学校生活を過ごしたいでした。
別に特別扱いはされたくはありません。全国の青年が経験することを当然のようにゆっくり、ゆったりと味わっていきたいが彼らの願いです。
学習も同じく、ゆっくりゆったりまわり道をして学んでいきます。だから専攻科を設置し、5年間かけて“生活力”を身につけていくことを主眼にしました。
勿論、働くことは大事です。しかし、もっと大事なことは青年としての経験を積んでから社会に出ることです。わかりやすくいえば友だちと一緒に楽しい思い出をいっぱいつくり、その中で学びあい、育ちあいながら経験することが青年期では一番に重要なことだと思います。その友だちには優しさをもち、互いに認め合う事が大切です。“みんなちがって、みんないい”のです。このことがわかるのには私たち教職員が生徒や保護者(特に母親)に対しては優しさを持ち、一緒に考えていくことが常に求められることです。その上で知識と経験が役立ちます。
特別支援教育の最終目標は実社会で働くことではなく、優しさと希望がもてるインクルーシブな社会で豊かに生きる力を身につけることではないでしょうか。
わが校では可能な限り通常教育のなかでひとり、ひとりの認知の特性を捉えその人の教育環境に合致するように保護者もまじえてじっくりと話しあいます。
殊更に違いばかりを強調することよりも、埋もれている力をいかに出すことができるかを多くに目で見ていくことが本校のいう特別支援教育です。
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