「通信制高等学校の歴史と現状」
校長 二宮 聡
「いつでも、どこでも、だれでも」は通信制高校の一般的なキャッチフレーズです。通信制課程については、戦後学制改革からの制度で60年以上の歴史があり、学校数は204校(公立:独立校8校・併置校63校、私立:独立校78校・併置校55校)あり、生徒数は18万7千人で、前年度より3千人増加しています(2009年5月学校基本調査速報)。
広域通信制(通学区域が複数以上の都道府県に及ぶ)高等学校は古くからある私立校には、科学技術学園・日本放送協会(NHK)学園・向陽台高校があり、1948年の学制改革から高度経済成長を経て、地方から首都圏・関西圏などに集団就職する中学卒業の勤労者に対して高等学校卒業を目指す場として設立されました。NHKの「高校講座」は、全国の通信制高校生の自宅学習に役立つことを目的に、1953年にラジオ放送、1960年にはテレビの放送も始まり、現在テレビ13科目・ラジオ12科目あわせて年間約1,300番組を放送しています。
1990年代から2000年代にかけて、専門学校や大手予備校・教育団体から通信制高校を立ち上げる学校が出てきました。当校もこの時期に開校しています。また、首都圏や関西・中部圏以外の県で認可を受け通信を立ち上げる学校や、全日制高等学校が新たに通信制課程を設ける学校も出てきました。2000年代に入ると、政府の行政特別区の制度を利用して、塾・サポート校などが地方自治体との特区申請をして新たに「株式会社」による通信制高校を設立するという動きが全国に広まりました。
公立校は各都道府県に設置され、その県の事情や地勢により、特色ある運営をしています。2000年代に入ってからは、地方自治体の財政危機などを発端とした公立高校の統廃合がきっかけになり、特に定時制課程の機能や単位制・多部制も併せた新しい形の通信制高校も増えてきているようです。
まだまだ、通信制高等学校については、政権交代による高校授業料無償化の動きもあって、様々な変化が起こる可能性があるでしょう。大阪府が認可した当校を含む私立通信制高等学校6校が今年度(2009年)、大阪私立中学校高等学校連合会の中に「通信制校長研究会」を立ち上げました。東京都や千葉県でも同じような動きがあり、学校単独で行動するよりも、まとまった形で今後を考えていく空気が醸成されつつあります。
勤労者の学ぶ場としてスタートした通信制高校。今後、IT化社会に対応する役割、多様な生徒が学ぶ場、全日制・単位制高校に並ぶ存在として、新しい時代を迎えています。
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