「卒業生の進路」
校長 二宮 聡
この度の「東日本大震災」で犠牲になった方のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々へ心からお見舞い申し上げます。
当校では、首都圏にも生徒さんが学ぶスクーリング会場があり、昨年移転し分校認可を受けた「横浜分校」、10月に西新宿へ移転した「新宿スクーリング会場」、池袋にある「池袋スクーリング会場」とも在校生・保護者の直接の被害はありませんでした。しかし、当日の交通機関の混乱と、計画停電の影響により、3月19日に横浜分校で行われる予定だった関東地区の平成22年度後期卒業証書授与式は中止となりました。
地震の影響がほとんど無かった関西での卒業式は、関東が予定していた前日に大阪市中央公会堂で行われました。開式にあたって犠牲者の方への黙祷を行い、受付に置いた義援金募金は、短時間であったにもかかわらず約2万5千円集まりました(日本赤十字社大阪支社へ寄付)。卒業生や保護者の方の熱く優しい気持ちが、被災された方へ伝わりました。ご協力いただいたみなさんへ、この場を借りて御礼を申し上げる次第です。
さて、巣立っていった卒業生は、どのような進路を選択しているでしょうか。
通信制課程の高等学校では、元来勤労学生が学ぶ場ということもあり、進学は卒業する生徒の約3割で比較的少ない割合でした。約6割がそのまま就労するか、新卒で採用される割合が多かったのです。
最近の10年間では、勤労学生が減少し、18歳年齢が増加したこともあり、進学と就労の割合が逆転してきました。進学の内容は、専門学校への入学が大学・短大の入学者よりも上回っています。この傾向も通信制高校全体の特徴となっています。進学が増加している原因は、単位制を採用し、他の高等学校・特に全日制から転学してくる生徒が増え、その生徒達が進学を希望していることが大きく起因していると考えられます。進学傾向は強いが、前に在籍していた学校に不適応であったが、それを自ら克服し、教師や家族の支えによる努力で適応がなされたことも、進学意欲を掻き立てる大きな一因となっているでしょう。
昨年卒業し大学に進学した生徒が、保護者の集いに来校して、在学時と進学選択の話をしてくれました。中学の時体調を崩し、全日制高校に進学したものの、毎日の登校が間々ならず学力的にも厳しいと判断し、当校へ転学しました。当校では体調と学習の見事にバランスを上手く取ることが出来、成果を積み重ねました。母親が二人三脚でよく支えておられたようです。卒業が予定通り出来る見通しが出来た頃、食に関する職業への夢が膨らんできました。大学や専門学校のオープンキャンパスや説明会に親子で何箇所にも脚を運んだようです。大学のAO入試や公募推薦で進学することも進んでいきましたが、大人しい性格や緊張してしまうことが重なり、なかなか合格に至りませんでした。しかし、学校で担任や副担任が面接練習や小論文の指導を繰り返し、本人と母親との努力の積み重ねで何とか大学へ合格し進学が決まりました。自宅から通学するのが遠いようで、慣れない一人暮らしを始めました。
在校生の保護者の前で、現況を語る彼が発した言葉が、「楽しいです!」でした。学ぶ喜びが溢れており、中々合格出来ず、懸命に面接練習をしている姿を思い出し、目頭が熱くなりました。この様に、個々の進路を見出せるように、当校では進路指導をさらに充実していきます。 |