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藤森純一の研究室便り

教養として法律を学ぶ意味は、自分とは何か?を認識すること。

2015/01/04

新年あけましておめでとうございます。

元旦は読書とお酒で過ごしていた私ですが、みなさんはいかがお過ごしでしたか?

今回のブログは、
「教養」という視点から法律を学ぶ意味
をお伝えしようと思います。

本学で学ぶ学生さんの多くは、法律の専門家を目指しているわけではないと思います。
したがって、法律を学ぶ意味を見いだせないかもしれません(「法律」を堅苦しい締め付けのある物と嫌う傾向のある日本ではなおさらかもしれません。)

ただ、法律の専門家ではなくても、法律の適用はあります。法律とは縁を切って生活することはできません。法律とは縁を切って生活できないのだからという意味では、学ぶ意味は消極的になってしまいますね。
そこで、積極的な意味を法律を学ぶということから見出してみましょう。

専門ではないから、教養として学ぶということになるのでしょう。(講義でも専門家向けという位置づけではなく講義をしています)。まず明らかにしたいのが「教養を学ぶ」意味です。

教養として学ぶことの意味を積極的に考えてみましょう。

まず、教養とは何か?


教養とは何かについての考えを二つほど紹介しましょう。

「教養とは、『社会の中で自分がどういう位置にたっているのかということを、自分の手である程度、解明できる状態』をいうと考えています。」『世間を読み、人間を読む―私の読書術』 (日経ビジネス人文庫)

「教養とは何か。それは『自分とは何かを明らかにしてくれる力』のことである。つまり内に向けては『自分とは何か』を承認し、外に向けては「自分とは何かを証明していこうとする行為の集積が『教養』なのである。」『まともな男になりたい』 (ちくま新書・里中哲彦)


なるほど...。

「自分とは?」を解明ないし証明してくことが、教養を学ぶという意味と考えることができますね。

では、教養として法律を学ぶということが「自分とは何か?」を解明ないし証明することができるのか?ということを考えてみましょう。

まず、二つの著作の共通することに気が付いたでしょうか?

「社会」「外に向けて」

ということです。

法律は「社会と自分との関係」においての行動のルールです。あるべき社会といった哲学が背景に描かれています。さらに、個別のルールでは、社会秩序を維持するためのバランス感覚が描かれています。

法の背景にある哲学を学び、そして個別の条文に描かれているバランス感覚を学ぶことで、社会の中で自分とは何か?がイメージできるわけです。

例えば、日本国憲法前文の一節を取り上げてみましょう。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」

この前文を暗唱できることが教養ではありません。日本国民である自分の立ち位置を解明していくことです。世界の中で自分は?日本の中で自分は?地域の中では?家族の中では?

この一節だけでは、解明できない。ならば、日本国憲法の背景にある哲学は?と遡り解明していくことです(ここで教養として歴史を学ぶ意味も見えてきそうですね)。

生きていくためには、もっと現実味のあることをというのならば、労働基準法や消費者契約法といった各種法令を学ぶということになってきます。
(自分とは何か?を教養から「生きていく」ということだけではなく、「生かされている」ということにも気が付くはずです。)

自分本位の面白主義、気ままな生活主義の中では、教養としての法律は息苦しいものでしかないでしょう。しかし、社会の中で自分、社会の中での自分らしさを、雑学ではない教養が示してくれます。

法律を雑学として興味本位の面白主義の中で学ぶのではなく、「自分とは何か?」を解明するものとして学んでみてください。

<参考文献>
『世間を読み、人間を読む―私の読書術』 (日経ビジネス人文庫・阿部謹也)

『まともな男になりたい』 (ちくま新書・里中哲彦)

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