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野口久美子の研究室便り

省察的実践家としての「学校司書1年生日記」、そして学び合い

2023/07/23

 こんにちは。司書・司書教諭科目担当の野口です。

 本学は2018年度に「学校図書館専門職養成プログラム(基礎・応用)」を開設しました。主に学校図書館で働く学校司書のリカレント教育を目的としていますが、学校図書館に関心があって学びを深めたいという方など、様々な方がともに学んでいます。基礎プログラムは文部科学省の「学校司書のモデルカリキュラム」に準拠した内容であり、応用プログラムは本学独自のカリキュラムです。

 今回は、学校図書館専門職養成プログラム(基礎)の必修科目である「学校図書館情報サービス演習」のエピソードをご紹介したいと思います。 

 今期の受講生は13名。その中に、4月から学校司書として働き始めたAさんがいらっしゃいました。

 Aさんは毎回の授業で「今日はこんなことがありました」「児童とこんな話をしました」と、4月から新たに始まったドキドキ・ワクワクの日々の様子をチャットで披露して下さっていました(※本学の授業では受講生はチャットで意見やコメントをします)。それを受け、私から「学校司書1年生日記をつけてはいかがでしょうか? 新人のときに悩んだことやうまくできなかったこと、今後チャレンジしたいことを手元で記録しておくと、後で振り返りの材料になり、きっと役立ちますよ」と提案しました。もちろん記録を取るのは大変なことでもあるので、余力の範囲内でやってみてくださいね、と付け加えました。

 そうしたところ・・・Aさんは「今週の学校司書日記です!」と、SOBAマナベルの質問機能(※履修科目の担当教員に直接質問を送ることができます)を通して、1週間にあったことをまとめて送ってくださるようになったのです。

 その内容がまた面白いこと!

 児童や先生方とのいきいきとしたコミュニケーションの様子が詳細に描き起こされており、どんなレファレンスを受け、どんなやり取りをしたのか、そして児童の反応まで、本格的に仕事を始めて間もない中で楽しみながら奮闘されている様子がよく分かる内容でした。「こんな素敵な記録を独り占めするのは勿体ない!」とAさんに相談の上、毎回の授業でAさんの学校司書日記を紹介し、私が23のコメントを加えるとともに、一緒に学ぶ受講生からも質問や感想を受け付けることにしました。

 ある日の学校司書日記には「先生からの依頼でブックトークの実演を初めてすることになりました!どうしましょう!」という悲鳴が。ブックトークとはどのようなものか児童に知ってほしいという先生からの依頼のようでしたので、私からは「まとまった時間をいただけそうなら、良いお手本と悪いお手本、両方をしてみるのはいかがでしょうか?」と助言しました。そこから本番までの経過、そして終了報告も学校司書日記を通して授業内で共有。「図書館愛があれば大丈夫!」「応援してます!」という一緒に学ぶ受講生たちからのエールが励みになったことでしょう。 

 教育学の世界には、省察的実践(*)という考え方があります。教育現場にいる専門職には、実践と省察を繰り返しながら力量形成を計っていくことが求められます。

 今回、Aさんが「学校司書日記」という形でご自身の省察を他の受講生に共有してくださったことで、学び合いの場が生まれました。学校現場で働いた経験のない受講生にとっては、学校司書として働くイメージが沸いたと思いますし、学校司書としての経験がある受講生にとっても自分の経験と置き換えて、自身が積み重ねてきた実践の意味や課題を改めて振り返る時間になったことでしょう。受講生自らの発信で自発的・自律的に学び合う、有意義な時間を設けられたことに感謝申し上げます。

 これからも受講生同士の学び合いと省察〜実践の場として、中身の濃い授業を作っていけたらと思います。学校司書として日々悩みながら奮闘している方々、是非八洲でともに学びませんか?

■八洲学園大学 学校図書館専門職養成プログラム

 https://www.yashima.ac.jp/univ/schoollibrary/

(*)専門書ですので少々内容は高度ですが、以下の本が参考になります。

 ドナルド・A・ショーン著、柳沢昌一、三輪建二監訳『省察的実践とは何か:プロフェッショナルの行為と思考』鳳書房、2007.

 https://calil.jp/book/4902455110

追伸:

 このブログを書いている最中に、本学卒業生の市川沙央さんが芥川賞を受賞したというニュースが飛び込んできました。市川さんおめでとうございます!

 https://www.yashima.ac.jp/univ/news/2023/07/post-740.html

 受賞会見で市川さんが言及されていた「読書バリアフリー」は司書資格取得を目指して学んでいる/学びたいと考えている皆さんには特に関心を持って接していただきたいトピックです。またブログで取り上げたいと思います。

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