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渡邉達生の研究室便り

勇気をふるう

2009/05/29

前回、陶芸の「ヒモつくり」によるカップを紹介しました。今回は、「塊(かたまり)づくり」で、お茶碗をつくっているようすを紹介します。
先日、三段階目で染付けをしました。それまでしてきたことの概略は以下の通りです。


第1段階:両手で土の塊を抱え込み、親指で空洞をつくり、その後、親指と他の指で土をつまんでは茶碗の形に。やわらかな土をしゃんとさせ、厚みを一定にするのは集中の極みで、何とかお茶碗の原型ができたのでした。
第2段階:生乾きの外側をヘラで削りました。高台のところは粘土の厚みを計算しながら、恐る恐る削り出します。気を抜くと底にぽっかり穴が開くよ、でも植木鉢にはできるよ...ユーモアのある師匠の言葉に背中を押され、何とか無事に高台の成形が成功。あとは外側のラインをなめらかに、なめらかに。気がつくと、2時間余り削っていました。削り出した土の多さにびっくり。そして、素焼きへ。
第3段階:今回が、ここのところです。できあがった素焼きに絵をかくのです。え~、絵ですか、と言って逃げ出したくなったのですが、ここまできたのだからとはげまされ、挑戦することに。顔料にはベンガラと呉須の二つを用意してくれました。ベンガラは鉄の赤茶色、呉須は紫色。ベンガラは散るので大胆な絵に、呉須は濃淡がはっきり出るので繊細な構図に向いているということでした。で、ま、迷って、呉須でかくことに...。しかし、そこからでした。顔料と筆はあるのですが、一向に前に進みません。素焼きのきれいなお茶碗の内側をずっと見ているだけでした。

 お椀の空間をどのように生かそうか...、できもしないのですが、いろいろに考えあぐねていたとき、ふっと、頭の中をよぎることがありました。古代中国の老子のいう、「無用の用」のところです。「土をこね、もって器を作る、その無に当たりて、器の用あり」...まさに、茶碗づくりが素材となっています。
人は土をこね、容器(お茶碗)をつくり、生活に役立てることができます。しかし、お茶碗が人の役に立っているとき、実際に入れ物として役立っているところは、土でできたところというよりも、それに囲まれた空間なのです。そこには何も無いのです。しかし、何も無いことが役立つのです。形の有るものが役立つのは、形の無いものが支えているからこそではないか...深いですね。この思想は、多くの人に幸せを運びます。職場で冗談を言っては雰囲気を和ませてくれる人、わたしが飲みたいからと気軽にみんなにお茶を入れる人、さっさと雑巾がけをしてさわやかな気分を作る人...。その人たちがいてこそ、仕事の成果もあがります。
そんなこんなに思いが行くと、絵には、昔々の、老子が登場するような景色をかいてみようと思いました。無謀なこと、なのですが...。そして、できあがった作品が写真のものです。このあと、白い釉薬をかけました。お茶碗は真白になりました。この後、本焼きに。
仕上がりを見るのは、こわいです。しかし、それに耐えなければなりません。


「さて、本焼きには、酸化と還元の二通りがありますよ。どちらにしましょう。」
師匠の言葉です。どうやら、還元とは、途中で酸素の供給を断つらしいのです。そして、還元の方が呉須の色がくっきり出るということです。絵に自信がないのでぼやけた方が無難かなと思って、「では酸化で」と言おうと思った、その時です。
「これだけ描いたのだから、還元がお勧めですよ」という師匠の言葉。
師、師匠、それはあまりにも...と言いかけたものの、口から出た言葉は、「還元でお願いします。」
何という、わが心の二面性。まだまだ、修行が足りません。

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