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渡邉達生の研究室便り

排他のプログラム

2009/07/09

(前回からの続き...)鮎は川の中で、自分の縄張りをもっていて、その縄張りの中に他の鮎が入り込むと、体当たりで攻撃を加え、他の鮎を追い出します。鮎は、川底の石についたコケを食べるので、コケの生えた石のある自分の縄張りを守ることが自分の命を支えることになるのでしょう。そうやって、自分の縄張りを守ることができた鮎のみが子孫を残していくことができます。どうやら、そのように自分を守るために他を攻撃して排除するということは、生きものの基本にあるようです。生きるために必要な行動がプログラム化され、生命体にはそのプログラムのスイッチを入れる意思が潜在しているともいえるのではないでしょうか。

 わたしは、かつて、小学一年生の学級担任をしたことがありました。そこでのことを思い出してみると気づくことがあります。子どもの攻撃精神、排他精神にはすごいものがありました。わがままを押しとおす、人をたたく、人に文句を言う。参ってしまいました。何が、子どもたちに、このようなことをさせているのか考えこんでしまいましたが、それは、多くの子どもたちの中で生活するようになった子どもが、自分の中にプログラム化されていた生きるために必要な行動を取るスイッチを入れたのだと考えることができます。わがままを押し通すのは欲をもっているからであり、人をたたくのは怒りを感じるからであり、人に文句を言うのは人に嫉妬の感情をもつからです。しかし、これは、人が、生きものであることを、証明していることでもあります。見方を変えてみると、それらがなかったら、人の種の保存は行われなかったのです。欲があるから食べ物を食べる意欲が生まれて元気をつくり出すことができます。怒りがあるから攻撃をされたと思うと発奮して自分を守ることができます。嫉妬心を抱くからその人には負けない自分にしようとして向上心も生まれます。

 そういえば、ずっと以前のことになりますが、テニスでよく知られている、あるプロの選手がテレビの番組で言っていました。「テニスは、意地悪なスポーツですよ。」最初は、ドキッとしたのですが、聞いているうちになるほどと思ったのでした。テニスは相手のコートにボールを打ち込みますが、そのボールは、できるだけ相手のいやがるところ、相手が打ち返しにくいところに、打ち込むようにします。そうですね、自分に都合のいいボールとは、相手にとっては、いやなボールなのです。そのように、相手にいやなことをし続けるのがテニス、だから、「意地悪なスポーツ」と言うのですが、そう言っているときの顔は、晴れやかな顔で、一点の曇りもない、おだやかな表情でした。相手に意地悪なボールを打つ、また、相手から意地悪なボールを打たれる、しかし、それが、すがすがしさへつながるのです。ここに、人間のすばらしさを感じました。ここには、他の動物の追随を許さない、人間としての生き方があります。

 いじめの問題を考えるとき、生きものとしての部分を否定するのではなく、生きものの部分をもとにして、さらにはそれを越える人間として生きる部分をどのようにつくっていくことができるのかを考えることが必要なのだと思います。

 先日、神奈川県南足柄市で、「いじめをなくす子どもフォーラム」が開かれました。集まった子どもたちは、いじめをなくすことについて、考えていることや取り組んでいることを発表しました。発表している子どもたちの表情がとてもよかったです。(次回に続く)

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