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渡邉達生の研究室便り

アサガオの生きる力

2009/08/02

 子どもがアサガオの種を、地下1㎝程のところに埋めました。その後、種は毎日、水をかけてもらえます。そして、約一週間後、土の上には双葉が出ていました。

 アサガオの種をまいた子どもにとって、双葉が出てきたことはうれしいことです。生命の働きを感じることでしょう。しかし、この、種が双葉を出すことが、約束された生命の営みであると考えると、芽が出て来たのは、水をあげ続けた、子どものがんばりの成果であるかのような思いにもなります。
「毎日、水をあげたから、アサガオは芽を出すことが出来たよ。」「水をあげ続けた子どもは、よくがんばった。」そして、水をあげ続けた子どもに、「あなたはよくがんばりました。えらい。」という言葉をかけてあげたくなります。

 それでもよいですが、ここで、改めて考えてみましょう。右上の絵は、その時の双葉の姿を思い出して書いたものです。地面の上に、何かがありますね。種の殻です。何でもないことのようですが、種は、地下1㎝のところに埋めたはずです。うぬっ、種は、地下にじっとしていなかったことになります。普通に考えると、地下に埋められた種はそこで芽を出し、根を出すと考えられます。そうであるならば種は地下1㎝のところにそのままあるはずです。ではないのですね。種は、地表に上がってきているのです。種から小さな根を出し、その根で種である自分を持ち上げ、地表近くまで押し上げると、ついには地面の上に引っ張り上げるのです。そして、種の殻を割ると、中から双葉を出したのでした。

 種は地下に埋められたのに、地上まで上がり、そこから芽を出すのです。簡単なようですが、そのようにできるための物理的な作用を考えると、そうするには、大きな力が必要であったことに気づきます。まず、地中の種は、種から小さな根を出します。根は細いです。根は力を込めると、土の間を進んで行くことはできるでしょう。でも、そのようにしたら、種は動きません。根が伸びるだけになってしまいます。種を動かすには、根は先に進まないで、根自体を地中に固定し、種を押し上げることが必要になります。生きる主体が、種から、小さな根の中に移動するような気がします。自分がそのまま力を出せば、根の先は地中に伸びて行くのですが、自分は動かないようにして、逆に種を押し上げていくのです。大きな力がいることでしょう。湿って固められた土を押しのけて、種を上に押し上げていきます。人間にたとえると、指先で逆立ちをするようなものでしょうか。

 そのようにして、種を地表まで押し上げる苦労をするのであれば、最初から、地面に居て、そこから根を出し、芽を出せば、よいようにも思います。しかし、それでは、育つ力は出て来ないのでしょう。ということは、土の中に閉じ込められることによって、自分の中から生きる力を引き出していくことができるようになるということです。

 土の中は暗いです。暗いということは、明るさのある方向が分かるということです。そのことによって、明るい方向に向け、自分を押し上げ、自分を伸ばそうとする力を出すことができるのではないでしょうか。もともと、明るい地上にいたのでは、そうして力を出すまでもありません。適当にしていれば、それなりの芽を出すことができます。トレーの中で発芽の実験をしても芽を出すことはできます。しかし、その芽は育つ力を自分で出すようにはならないのです。

 アサガオの種は、厳しい生存に向けた営みを土の中で行うことによって、地表に双葉を出すことができたのです。そして、そのことを行う種のみが、この世に、生命のつながりを残すことができたといえるでしょう。

 生命は、そのような強さを内に秘めているからこそ、現代の世に生きていることができるのです。人も、そのような生命体のなかまであることに変わりはありません。明るく生きることをめざして、生きようとします。しかし、アサガオの種が、明るい地表にいるままでは、自分を育てる力を出すことができないように、わたしたちも、明るい生活の中にいるままでは、自分を育てる力を出すことができないように思います。暗くなること、つらい境遇に陥ることが、自分を育てる力を得る機会となる、という考え方が必要ではないでしょうか。

 暗いこと、つらいことは、いやなことです。そうさせた相手や社会に不満をぶつける、クレームを言う、そうすることが、今の社会の常道のようにもなっています。自分を暗くしてくる相手を撃破し、明るく生きる自分を担保する、という考え方がそこにはあるのです。しかし、それは、自分のことを大切に考えるがあまりに、他者のことを顧みないという構図の中にいるのです。いつの間にか、不満のるつぼの中に身を置いていて、考え方がとげとげしくなっていることでしょう。そこに、いじめが登場します。

 自分はいじめているつもりはなくても、他者にとっては、いじめになっていることが多々あるのではないでしょうか。『さるかにがっせん』という昔話があります。かににいじわるをしたさるは、臼・蜂・栗の連合軍によって、仕返しをされました。かににいじわるをしたさるが悪い...いじわるをされたことを他者のせいにすると、仕返しをしたくなります。しかし、その仕返しもまた、他者をいじめることになります。この場合、さるへの仕返しは、集団でのいじめです。仕返しをしてもらっても、かにの心は、明るくはならなかったはずです。

 アサガオの種は、土の中に閉じ込められ、暗くなった中で、小さな根を出し、そこに自分を移して、種である自分の本体を地面の上に押し上げました。地面の上が明るいことがわかるから、大きな力を出すことができたのです。わたしたちも、明るく生きるということがわかれば、そこに向けて自分を押し上げる力を出せるようになるはずです。そこで出てくる力が、生きる力です。他者のせいにするのではなく、自分が生きる力を出せる...それが、現代に求められているのです。

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