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渡邉達生の研究室便り

規範意識

2009/09/21

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 先週の土曜日の朝。外には気持ちのよい、やわらかな日差しが降り注いでいました。その陽光にひかれ、カメラを持って外に出ました。
 街路樹には白い花が咲き乱れ、風にゆれていました。花は夜を徹して日の出を待ちかねていたかのように、折からの風にゆれながら朝日をいっぱいに浴びていました。

 また、そこには何匹もの蝶がいて、花の間を飛んでは、花の蜜を吸っていました。たっぷりと夜露を含んだ花の蜜は、降り来る朝日によって豊潤な香りを蒸散させているのでしょう。花から花へとわたり行く蝶の姿に、うれしげなふるまいを感じました。

 花にとって、そして、蝶にとっては、朝日の到来が、晴れやかな一日の始まりとなっているかのようでした。太陽は、すべての生き物に、生きる力を授けてくれます。人間もその生き物の中の一員です。花や蝶と一緒になって朝日を浴びていると、今日という一日に、何かいいことがありそうな、そんな予感を感じさせてくれる喜びがありました。

 近年、道徳教育で、規範意識の育成が課題とされています。社会のルールを心得る、自分の行動に責任をもつ、などの意識を、今まで以上に育てようというものです。現代は、そのような社会情勢にあるのです。規範の規は、定規の規です。心の中に、定規のような行動の手本となるものがあるといいのですが...。しかし、文明の発達は、それまで社会が規範としていたものを取り払って来ました。昼と夜、善と悪、大人と子ども、学校と家庭、父と母、親と子、教師と子ども、生と死。文明の進歩によって、これらの間が、あやふやになっています。それは人間が求めてきたものではあるのですが、そこに、心のケアが追い付いていないようです。これらの間を分かつ「ものさし」を手に入れることが、規範意識を高めることになるのではと思います。

 朝日を浴びた心地よさの中にいると、その、規範意識の大本は、生命の根本である朝日を浴びることによってできていくのではないかとも思いました。人には感情があり、時に、喜怒哀楽などの気持ちによって、いいかげんさ、自暴自棄、悩み、ごうまん、などの自己が起きます。その自己が、自身にある規範を覆い隠すのです。そして、ストレスとなってたまります。ところが、朝日は、そのような「規範を覆い隠す自己」を吹き消してくれるようです。

 花や蝶のように、朝を迎え、朝日を浴びることに喜びを感じることが、文明の発達した今こそ、人にも必要となっているのかも知れないと思ったのでした。

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