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渡邉達生の研究室便り

自立

2009/10/09

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 ケイトウを見ていたら、何と蚊がやって来て、蜜を吸いました。そんなばかな...。ありえる話かな...。
 蚊は、人の血を吸うのではなかったの?蚊を見かけると、「血を吸われる」、「叩きつぶさなければ」と、とっさに思います。特に、秋の蚊は身のまわりに寄ってきて、なかなか離れません。こちらの隙をうかがっています。冬越しを前に蚊も必死だなと、思っていたのでした。

 気になって調べてみると、ふだん、蚊はオス・メスとも花の蜜・果物の汁・樹液などを吸い、メスのみが、産卵の前に血を吸うとのこと。では、わたしに見向きもしないでケイトウにとまっていたのは、オスの蚊か、産卵前ではないメスの蚊ということになります。いずれにせよ、この、写真に写した蚊は、おだやかに、自分の生き方を生きていたのでした。蚊さん、誤解していましたよ。申し訳ない。

 どうも、わたしたちは、見方が一面的になるところがあります。蚊は血を吸う、蚊は病原菌を運んでくる、という知識を得ると、蚊を悪いものとしてしか見なくなってしまいます。思えば、ケイトウの、細くとがっている花の中にある蜜を吸うには、蚊のように先の長くなっている口が必要です。そう、蚊は、必要とされているのです。ケイトウの花にとっては、その口先に花粉を付けて他の花と受粉をしてもらえるので、願ってもないほどのありがたいことなのでした。蚊はケイトウの花を生かして、生きていたのです。蚊とケイトウの花とは、助け合っています。

 今まで、蚊に対して、何という邪悪な存在なのかという思いが先行していました。生き物の血を吸って生きることから、さげすんだ見方もしていました。しかし、反省です。この日見た蚊は、優雅に生きていました。蚊は、蚊として生まれ、もって生まれた自分の生き方を生きようとしていたのです。(人の血を吸いに来たときは、人も、人としての生き方をかけての真剣勝負、とまいりましょう。)

 人も、人として生まれ、子どものときから、家族の間や、学校のみんなの間の中で、人として生きていく術を身につけて行きます。しかし、人は心をもつ存在であるが故に、かえって複雑なことにもなります。相手のことが気に入らないと、ひやかしをし、いじめをし、暴言を吐き、...。人は人といることがうれしく、人に喜び与えることで自分にも喜びが生まれ、人と共に生きることの中に自分の生き方を見出せるはずなのに、逆に、人を傷つけ、己の気分を相手にぶつける、ということがあるのです。

 なかでも、最近起きた、小学生殺人未遂事件のことを思うとき、心のざわめきは続きます。小学生に暴行し、海に落としたとして逮捕されたのは、15歳の少年と中学生。また、その少年たちにそそのかされる形で、被害者と同じ小学校の子どもも暴行に加わっていたとのこと。教育担当者は、「あってはならない事件。各校の道徳教育のあり方を見直し、家庭と連携していきたい」と語っていました。また、報道関係者は、「警察の捜査とは別に、地域や学校、それに家庭の役割を、もう一度、見つめ直すことも忘れてはなりません。」と、訴えていました。関係者の心痛がよく伝わってきます。何とか、荒んでいる子どもの心を救いたいのです。

 重大事件が起きるたびに、識者から、上記のような「学校の道徳教育のあり方を見直し、家庭と連携する」「地域や学校、それに家庭の役割を、見つめ直す」という方向性が発せられます。が、今までの事からして、その思いが、それを必要とする子どもの心に届くには、はるかな道のりがあります。果たして、どのようなことを、学校の中に、そして、家庭の中に、押し広げていけばよいのでしょうか。

 報道を見ると、逮捕された少年は、小学生のころ、なぐられたり、くつをかくされたり、教科書をかくされたりと、数々のいじめにあっていたとのことでした。これにも、心が痛みます。つらい小学生の時代を生きています。そのつらさをもって、くじけないで生きていくためには、道徳として、どのような見方を授ければよかったのでしょう。

 星野富弘氏の書いた詩の中に、次の言葉があったのを記憶しています。
「喜びが集まったよりも 悲しみが集まった方が しあわせに近いような気がする。」
 人は、だれしも、しあわせを求めます。しあわせは、喜びを感じることでしあわせになります。しかし、喜びの反対の、悲しみの中にしあわせへの近道があるというのです。軽々にうなずくことはできませんが、含蓄のある言葉であることはわかります。そして、しばらくこの言葉を見ていると、心をそのように整理してみたいという気もしてきます。

 つらいことに出会っても、嘆いて自分をいじめるのではなく、人に卑屈になるのでもなく、自分の生き方を自分なりに展開する。そこに、自立があります。

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