八洲学園大学トップ > 八洲学園大学ブログ > 渡邉達生の研究室便り > 木に育てられる
渡邉達生の研究室便り

木に育てられる

2009/10/19

omoiddeno kaki2.jpg

 一個の柿が、わたしの心を締め付けます。せつなく、くるおしく。

 先週の週末、実家に帰省して稲刈りを手伝いました。そして、日曜日、東京に帰るとき、父が、「はい、家の柿。今年の初物よ。」と言って手渡してくれたのです。

 実家では、共に80歳を超えた父と母が農業を営んでいます。父は今年の夏、手術をしました。今までは稲刈りの手伝いに帰省することは無かったのですが、今年は心配になり、帰省しました。お天気にも恵まれ、稲刈りは無事終わり、家を出る間際、父が柿を手渡してくれたのでした。

父から柿をもらう...、50年ほど前、そう、そういうわたしがいました。稲刈り作業の手伝いをしていた子どものわたしに、きれいに皮をむいて食べさせてくれていました。この柿の木は「富有柿」。父のおじいさんが家の周囲にたくさん植えたと聞いています。それ以来、世代を超えて、この柿の木になる柿の実は、その時々の家族に、心の通い合う場を提供して来ていたのでした。それを思い、そしてまた、家を出ていくわたしに、柿の実を枝から折って来て、枝つきのまま差し出してくれた年老いた父の心情を思うと、こちらの目にも涙がにじみます。

そういえば、子どものころ、近所の家々には、その家を特徴づける木がありました。
「なつめの木」のある家、「ゆずの木」がある家、根っ子からニッケイ(カプチーノコーヒーをまぜる棒に似ている)がとれる「肉桂(にっけい)の木」がある家、「金柑の木」がある家、「いくり(すもも)」の木がある家、そして、当時、わたしの家には、柿の木がたくさんありました。

今思うと、それぞれの家では、その木を通して家族の語らいがあったのではないかということに気づきます。収穫があり、だんらんがあり、木の世話をする日常があり、木の下で憩うときがあり、台風への援護があり...と、そのような何気ない日々が、家族のまとまりをつくっていたのでしょう。木は、数十年の長きにわたり、自らの雄姿を披露してくれます。それが世代を超えて、そこに集う者たちの心をまとめていくことに効果があったのではないかと思われます。

また、ある小学校では、校門の近くにある神社に大きな杉の木があるところから、その大杉のようにたくましく育つように、「大杉集会」という異学年の子どもが集まる集団をつくって、いろいろな活動に取り組んでいました。集会の冠に「大杉」があるので、自然と大杉のことに関心が行きます。ある子どもが、次のように話していました。
「毎朝、学校に着くと、大杉が今日もがんばれと言ってくれているように思います。」
 大杉の生きている姿が、一人ひとりの心に、よい道標を投げかけていました。

 家庭は幾世代もの人が世代をつなぐことで成り立っています。学校は同世代の子どもたちが集まることで成り立っています。その家庭や学校で、その社会を構成する人たちの心をまとめていくものを得ることの大切さを、改めて思ったのでした。

 さて、父からもらった、一個の柿の今後ですが、どうしてもすぐに食べる気持ちにはなれません。しばらく、ながめて、故郷の余韻に浸りたいのです。また、自分だけで食べてはいけないような気もします。そこで、今度の日曜日、この柿一個でジャムを作ろうと思いました。そして、家族で分けて食することにします。ジャムのいわれを話しながら。

八洲学園大学 〒220-0021 神奈川県横浜市西区桜木町7丁目42番地

出願・資格取得について・入学前相談・教育訓練給付金等はこちら
 入学支援相談センター 045-410-0515/u-info@yashima.ac.jp

在学生・卒業生・教員免許状更新講習・就職関連はこちら
 学生支援センター 045-410-0515/u-info@yashima.ac.jp

広報・公開講座・教員への取材等はこちら
 総務課広報係 045-313-5454/u-yue@yashima.ac.jp

八洲学園大学パンフレット ※八洲学園大学の各種資料をダウンロード頂けます。

ご希望の資料はPDFでも閲覧可能です。
PDFファイルを閲覧するには、Adobe Acrobat Readerをインストールしてください。

八洲学園大学

学校法人八洲学園大学 入学支援相談センター

〒220-0021 神奈川県横浜市西区桜木町7丁目42番地
電話:045-410-0515(受付時間はこちら
お気軽にお電話ください

  • 資料請求
  • 出願受付
JIHEE