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渡邉達生の研究室便り

規範意識

2010/04/25

 遠くに見えるのは、埼玉県の武甲山。そこから吹き降ろす冷えた空気は澄みわたり、まさしく冬の気配でした。しかし、目の前には春の芝桜が広がっていました。冬と春が、互いの領分を尊重し、互いが互いの個性を引き出して、見事な調和を見せてくれています。 

 対立軸でものごとを考えがちな人間に、他者といることの意味を問いかけているかのようにも思えました。
 
 近年、子どもに規範意識の育成を、ということがいわれています。わがまま勝手な振る舞いが目立つからでしょう。約束やきまりをつくり、それに従わせることが、その解決策のようにもいわれています。
 しかし、おかしなもので、そうすると、互いを責めるようにもなってしまいます。
 約束やきまりを守っている人が、守っていない人を見て、「わたしは守っているのに、あの人は守っていない。」と言うようになるのです。そこには守っていない人を責める気持があります。すると、言われた人はおもしろくないから、反発を覚えます。言った人は当然のことを言ったのにと、これまた、自分の正しさに凝り固まって相手を非難してしまいます。調和どころではありません。対立が起きます。人は、よいことをしたい、きまりや約束は大切、という志をもっていても、うまく行かないのです。どう考えればよいのでしょう。

イソップ話に、『旅人とプラタナス』という話があります。
夏の暑い日、旅をしていた男たちは、あまりの暑さにへとへとになってしまいました。そこに、葉を茂らせているプラタナスの木を見つけました。旅人たちはその木の下の木陰に入って、しばらく休むと元気をとりもどしてきました。そして、枝に実がないことを知ると、「この木は実をつけない」「役に立たない木だ」と話すようになりました。それを聞いたプラタナスは、「この恩知らずども、今、わたしのおかげで元気になれたのに」と、旅人を責めるのでした。

さて、このお話をどう見るかです。この話を見て、旅人は身勝手だ、プラタナスはかわいそうだ...。旅人のような身勝手な子に注意をしよう...と、よい生き方を志すことができるかもしれません。でも...身勝手だと責められた子は、反発を感じないでしょうか。

旅人も、暑さにまいっているときには、実がある木よりも、暑さをさえぎる木陰がたっぷりある木が欲しかったのです。そして、木陰に入って元気をとりもどすことができたとき、のどの渇きを覚えたことでしょう。そのとき、初めて実が欲しくなったのでした。そこに旅人の置かれている状況があります。身勝手というよりも、「元気になった」「そういえばのどがかわいたよ」「果物がほしい」と、体が欲した自然の成り行きなのです。

思えば、プラタナスは旅人に木陰をさしかけ、実が欲しいという気持ちが起きるまでに回復させてあげることができたのです。そこまでが、プラタナスの領分でしょう。プラタナスは自分の領分をよく築いているのです。そして、「実がついていない」「役に立たない」という旅人の言に対しては、相手を責めることなく、「おめでとう。実が欲しくなるまでに元気になれたね。さて、今度は自分で実のある木を見つけてね。」と、相手にエールを送ることが、旅人の領分を生かすことになるでしょう。ここに調和が生まれます。それぞれが自分の領分を築き、他を責めることをやめ、エールを送ることで、プラタナスも旅人も幸せになれるのです。

きまりを守っている人は、そのことで張りのある生活ができている自分に充実感をもてているはずです。いわば自分の領分が築かれているのです。また、その雰囲気が、守っていない人にエールを送っています。その自分は誇らしくもあることでしょう。守っていない人を責める必要はないのです。エールを受けた人は自分の領分を整えようとするでしょう。
そのことを後押しすることで、調和が生まれ、規範意識を尊重する社会が生まれていくと考えることができます。人を責めては、支配になってしまいます。

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