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渡邉達生の研究室便り

勤労感謝の日(働くことの意義 その一)

2010/11/19

考えるヤジベー.JPG

ドングリでヤジロベーを作りました。ロダンの考える人にあやかり、考える野次さん。
 小学生のときにも、工作の時間にドングリでヤジロベーを作りました。50年前の、遠い昔のできごとでした。丁度、今頃の季節でしょう。てのひらの上に乗せた、大ぶりで丸いつややかなドングリの実をいつまでも見ていた記憶が残っています。それは、人にもらった見事なドングリでした。
 その小学生だったときに読んだ本の中の話が、勤労というテーマをもって、いまだにわたしの心に息づいています。

 その話は、お父さんとお母さん、それに、小学生の女の子の姉妹二人の、四人家族での話でした。家は農業をしていましたが、お父さんが病気になって働くことができなくなってしまいました。お母さんがお父さんの代わりに一生けんめいに働くようになりました。子どもたちも、よく手伝いました。でも、次第に、お母さんの、子どもたちへの要求は厳しくなっていくのです。明るかったお母さんの顔つきも険しくなり、よく怒るようになりました。それでも、子どもたちは、お姉さんが妹をかばい、お手伝いを続けました。そして、お母さんの変わりようを悲しく思うのでした。

 そのうち、お母さんも無理がたたって寝込むようになりました。それで、子どもたちは、けなげにも今まで以上に、お手伝いに精を出すようになりました。ところが、次第に、お姉さんの顔つきが険しくなっていくのです。そして、妹の仕事ぶりをなじるようになったのです。妹は、悲しくなりましたが、我慢してお手伝いをしていました。でも、とうとう、抑えきれなくなってお姉さんに言うのです。
「お姉ちゃん、お母さんと同じになったよ。」
 そして、大きな声で泣いたのでした。
 お姉さんはショックを受けました。
「わたしが、あの怒りっぽくなったお母さんと同じようになっていた...。」
 ...ここで、記憶は途切れます。

 一生けんめいに働くと、怒りっぽい人になり、仕事をしている人に対しても文句を言うようになる、明るかったお母さんが、そして、妹をかばっていたお姉さんの、ふたりともが変わってしまいました...。

 働くことはいいことだ、とだれもが言います。またそうであると思います。でも...、一生けんめい働くと怒りっぽくなる、なぜ...。仕事をしていない人に注意するのならわかるが、仕事をしている人に文句を言ってしまう...、うぬ、働くことで心は荒んでいくのか...これでは、いやなことのがまんの上にしかしあわせは来ない...。しあわせになりたいから働くはずなのに...、

 このような、何だか納得できないものがあって、心に強く残ったのだと思います。何とかすれば、このお話の中の、お母さんやお姉さんの心は、おだやかなままでいることができたのではないか、いや、かえって、逆境であるからこそ、力を合わせて明るく生きていけるのではないか...と、心の片隅に、このことの決着が持ち越されて来ました。

 そのことがあってでしょう。イソップ話の『アリとキリギリス』で、冬になってキリギリスが食べ物を求めてアリの家に行ったときの、アリがキリギリスに言った言葉には悲しさを覚えました。アリはキリギリスに言いました。「あなたには、夏のとき、注意をしましたよ。歌ってばかりではなく、食べ物をたくわえなければ、冬になって困りますよと。あなたは、その注意を聞きませんでした。だから、あなたにあげる食べ物はありません。」これでは、残酷です。確かに、アリは一生けんめいに働いて夏を生きました。でも、キリギリスも、キリギリスなりに、一生けんめいに夏を生きたのです。歌を歌えるという自分の特技を活かして。アリは、歌を歌おうと思っても歌うことはできませんでしょうに...。

 アリは、食べ物をたくわえることができました。しかし、そのことが、働くことの価値を見失う原因にもなっているのではないでしょうか。
 アリも食べ物をたくわえることを通して、心には喜びを感じていたはずです。
 ・大きな食べ物を見つけたよ。家で待っているみんなに知らせたら喜ぶだろうな。
 ・友だちを読んで来て一緒に運ぼう。
 ・この食べ物を運び込んだら、大きな倉庫を作り足そう。もっと、見つかりそうだ。
 ・だれかに、この食べ物を分けてあげよう。

 このように、働くこと自体のなかに、働くことがもたらしてくれる価値を感じていれば、キリギリスに対しても、もっと、おうような、愛情のある、かかわりができたはずです。
 働くことは自分を開発し、他の人とのかかわりをつくり、節度のある生活をしようとする自分を、自分で形成していくことになるのではないか...と思うのです。

 その働くことの価値について、「勤労(働くことの意味を考える)」というテーマで、小学4年生に授業をする機会がありました。その詳細については、次号で、お知らせいたします。
 勤労感謝の日が近づいてきます。...勤労の意義を、改めて考えてみるときです。

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