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渡邉達生の研究室便り

ストーンサークル

2011/11/09

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縄文の人たちは何を考えて広大な台地に、大きなストーンサークルをつくったのか。そんな思いにとらわれ、10日ほどが過ぎました。縄文時代の遺跡を目にして、そう思うようになったのでした。
 見学したのは秋田県北秋田市。当地での道徳教育研究大会に招かれて講演をした翌朝、近くにある縄文遺跡に案内していただいたのです。白い朝もやが立ち込める中、坂を上った小高い台地に、その遺跡はありました。能代大館空港がつくられ、その空港に行くための道路を開削中に発見されたそうです。この遺跡の特徴はストーンサークル。朝もやのなかに、文字通り、石が、大きな円形に並んでいました。石は、大人がやっとかかえられるほどの、大きな、かどが丸くなっている川原の石でした。遠くから運んで来たのでしょう。

 写真を見ると、数個の石が一つの小グループになり、その石の小グループが、列をつくって続いているのがおわかりいただけると思います。列は左の方に大きくカーブして、大きな円周を作り上げています。昔の人たちは、何のために、このような巨大なモニュメントをつくりあげたのでしょう。約4000年前のことだといいます。

 遺跡の周辺には、大きな木の切り株がたくさんありました。この遺跡が発見されて、周辺を整備したときに伐採された木の切り株でしょう。あたりの山々に、木を伐るチェーンソーの音が鳴り響いたに違いありません。しかし、この遺跡ができた4000年前は、もっと、大木のしげる台地であったに違いありません。そこに広場をつくったのです。チェーンソーはおろか、ノコギリなどはない時代。石斧で風雪に耐えた堅い木を切り倒す...このことを考えただけでも、気が遠くなるほどの時間と労力を要することがわかります。でも、人々は、あえてそのことに挑戦し、みごとに、山上に広大な広場をつくり上げました。そして、そこに、わざわざ川から石を運び上げ、円形に並べたのです。なぜなのでしょう。人々にとって、それほどに重要なこととは、どんなことだったのでしょうか。

 以下は、わたしのひとり言です。乱暴な発想ですが、ご容赦を...。
 昔の人たちも、わたしたちも、人としての基本的なところは同じはずです。それで、人が生きるのに必要な、基本的なことを考え続けていると、人の克服すべき原点に思い当たりました。

人は他の生きものとは違って、よく考えることのできる心をもっています。心で自らの安定した生活を願います。ところが、その自らの安定を願うところが、他の人と競合すると、欲や、怒りや、うらみが、発生することになります。現代でも、兄弟げんか、派閥争い、いじめ、民族や宗教の対立、ひいては戦争を引き起こしてしまいます。これを、克服することが人間の永遠のテーマでもあるのでしょう。昔も、きっと、そうだったのではないでしょうか。そして、それを克服するために、ストーンサークルが築かれた...と、思ってみました。

そして、現代の人もストーンサークルの考えを引き継いでいるはずだと思って、いろいろと思いめぐらせていると、小学6年生の時、社会科の教科書に、国連安全保障理事会の会議場の、特徴的な写真が載っていたことを思い出しました。席は円形に並べられていました。そう、席がサークルになっているのです。二つの世界大戦という貴い犠牲をはらって、人々は、安全保障理事会のしくみと、円形という会議場の席の配置に到ったのです。だれもが、争いをなくし、平和な世の中にしたいのです。この平和への願いは、人々の悲願です。常任理事国の拒否権が行使されたりして、なかなか、その人々の願いは実現できないけれど、そうすることに価値をもって、努力目標としているのです。それは、昔とて、同じはずです。

 4000年前の人々の最大の願いも、安全であり、安心した暮らしであったことでしょう。考えてみると、日々の生活を送るのに、今よりももっと神経をすり減らしていたに違いありません。特に、米や麦などの穀物の栽培や貯蔵が今のようにはできない時代であることを考えれば、食べ物を手に入れることは大変なことで、大事な家族を養うため、自分たちの集落を守るためには、争いも、当然、頻繁に起きたことでしょう。人を愛する人であるが故に、人は人との争いも起こすのです。
 しかし、争いは、できれば避けたいです。そのみんなの願いを解決するために、みんなが集まる広場をつくった...、としてみましょう。この地域の安定を願う長老の発案で。

 各集落から、各戸、それぞれ一個ずつ大きな川石を山に持ち寄ることにします。そして、集落ごとにまとめて置きます。広場は山で、そこに川の石を置くので、もとから山にあった石とは区別がつきます。石の小さな集まりが、その集落の戸数を示します。そして、それらを円形に並べて配置することで、各集落が集まって地域一帯の全体像ができあがっていることを体感するモニュメントとなります。

 これを見ることで、この地域一帯にいる人たちは、互いに、その存在を認め合うことになります。それは、きまりの基本ができることです。これをもとにして食料を配分することにすると、みんなは、それが公正であることを納得できるでしょう。集落の規模が明示され、互いの存在が保証されているのですから。石は、現代の戸籍や憲法のハタラキをしていたのではないでしょうか。

 近くの川には、今でもサケがのぼって来るといいます。当事、たくさんのサケがのぼってきたとき、公正に配分できる基準があると、我先にではなく、みんなで協力し、安心してサケを捕らえることができます。また、トチの実を収穫したり、大きな動物の狩りをしたりすることなどを、みんなで楽しみながらする余裕もできます。こう考えると、縄文の人たちが、身近に感じられてきました。

 このようにして、文字の無い時代、人々は、互いに心を合わせて、住みよい社会をつくろうとしたことが想像できます。貴い、人間の営みです。
 現代は文字があります。でも、かえって、文字情報を氾濫させ、大切なことは何かがわからなくなっているようです。

  遺跡で解説してくれた人が言っていました。
「何しろ、4000年前のことです。調べたことで、昔はこうだったのではないかということは言えますが、実際にどうであったのかは、だれもわからないのです。どうぞ、みなさんもいろいろ考えて、わたしに知らせてください。」
 いい言葉だなあと思いました。わからないということが、想像する楽しさと、人間の原点に思いをはせる機会を運んで来てくれます。どうも、お世話になりました。まだ、その余韻に浸っています。

 昔の人も困難を克服して、現代に、命をつないでくれました。

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