朝、室内の鉢植えの若芽が、朝日を浴びていました。若芽は、さぞ、うれしかったことでしょう。春の先取りのようでした。春は、必ず来るはず...。
世の中、暗いニュースが多いです。
先日の新聞に、「小中高生のいじめ7万7630件―文科省調査 前年度比4800件増加」という見出しがありました。
いじめられる人が増えました。...かわいそうです。
人に悪口を言われたり、ばかにされたりしては、だれだっていやです。心が平穏になるはずもありません。しかし、親に心配をかけたくもないのです。だから、悩みは、深刻になります。
今読んでいる伊集院静の『海峡-少年編・春雷』に、いじめに立ち向かう少年の心情が描かれています。いじらしい、いちずなその思いに涙が出ます。通勤電車の中で読んでいるので、困るのですが。少し読んでは、そっと涙をふいています。
そして、子どものときのことを思い出します。あるとき、いじめられて、そのことが親に知られてしまったことがありました。そのとき、父は言いました。
「いじめられたとき、こわくなっても泣くな。」
「泣くと、一生負ける。」
「どうしても泣きたくなったら、思い切って頭から相手に突っ込んで行け。」
「相手に負けそうになったら、腕にかみつけ。」
「そしたら、勝つことはできなくても、負けることはない」と。
父が口にしたのは、相手を悪く言うことや、学校への不満ではなく、また、いじめられたわたしをしかるのでもなく、泣き虫だったわたしへの激励でした。小説に登場する少年の行動を見て、そのときの自分を思い出します。その後、いじめられても、泣くことはしなくなりました。そして、当時、大相撲で大鵬と共に活躍していた柏戸が好きになりました。
友達の多くは大鵬を応援していましたが、わたしには、柏戸の、前に出る相撲が、とてもかっこよく見えたのでした。父の言葉が心に転機を与えてくれたのだと思います。そして、いじめられることに対して、自分にできることをすることの覚悟と、見通しを感じたようにも思います。
学校では、つらいことも起きます。でも、見通しを持ちましょう。春が向こうからやって来るように、三月四月は、大きな転機をもってやって来ます。学年が変わります。学級も変わります。委員会も、クラブも、部活も変わります。学校が変わる人もいることでしょう。新しい陽光を浴びるときが、必ず来るのです。