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渡邉達生の研究室便り

自分の空をつくる

2012/03/01

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昨日は大雪でした。空を見上げると、雪が次から次へと舞い降りて来て、見上げていると異次元の世界へ入って行くようでした。

 卒業の時期が近づきました。卒業される皆さんは、喜びと、去っていくことのさびしさとを感じていることでしょう。

 卒業して社会に出て行くことを、「巣立つ」「大空にはばたく」、ということがあります。慣れ親しんだ学校を離れることはさびしいことです。でも、そのさびしさの向こうには、きっと新しい世界が待っている。そう思うことで、さびしさを超えて、前に進む元気が出てきます。だって、空には...陽射しがそそぎ、雪が降り、雨が降り、雲がわくのですから、だいじょうぶ。陽射しは温かな希望、雪は問答無用の節理、雨は命をはぐくむ豊潤、雲は心にたちのぼる意思。それぞれが、それぞれに、自分を、きたえてくれます。

空という漢字は「穴」に「工」と書きます。そして、「穴」には「八」があります。おもしろい組み合わせですが、八は、その形から、広がるという意味があることを感じます。そうしてできたものが、穴でしょう。工は、大昔の甲骨文字にもあり、穴を開けるときの「のみ」をかたどったものということです。工の、下の横棒が刃、中の縦棒が握るところ、上の横棒が「つち」でたたくところ。

「のみ」を使うことで、かたい木材に穴を開けることができます。かたい石だって穴を開けることができます。そして、「かたいもの」だけではなく、「つかみどころのないもの」にも穴を開けることができて、できたものが「空」。う~ん。わかるような気がします。

心配ごとがあって気持ちがふさがることや、悩んで滅入るというような、つかみどころのない心も、風穴(かざあな)を開けることができると、心はリフレッシュして、世界観が広がった気がします。それが人生です。

 ん、そうか。卒業できたということは、そのようなハタラキをする「工(のみ)」を手に入れることができた、ということですね。その自分の「工(のみ)」を使うことで、自分の「空(世界)」をつくることができます。卒業される皆様、どうぞ、自信をもって、自分を一歩ずつ進めてください。
 卒業、おめでとうございました。

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