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渡邉達生の研究室便り

鉛筆で体験の意味を味わう

2012/05/18

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学ぶことは、新しい世界の中に入ることです。ただ、それには、自分の殻を破る、ちょっぴりの勇気も必要です。

わたしの担当科目に、「体験と心の育ち」という科目があります。近年、世の中が便利になった反動で、体験の不足という事態が起き、いろいろな問題を引き起こしている、といわれるようになりました。そこで、生活の中にある体験の意義に改めて目を向け、そこにある心の育ちを見てみるという科目です。

 その第一回目で提議したのが、「鉛筆を手で削る」という体験でした。今の子どもたちは、かつて、手で鉛筆を削るという文化があったことを知らないでしょう。鉛筆削り機でガーっと削ることが当たり前のことになっています。たとえ、カッターナイフで削っても、不恰好な鉛筆になって、手で削ることは、めんどうなこと以外の何ものでもないでしょう。

 ところが、一昔前まで、鉛筆は手で削るものでした。しかも、美しい仕上げになるように削る文化がありました。小学校のときには、夜、親が削ってくれました。その親の鉛筆を削る姿を見ては、ありがたいと思ったり、そのように鉛筆が上手に削れるようになりたいと思ったりしたものでした。そこには、親子のふれあいがありました。そして、学校で鉛筆を使っているとき、親への感謝や、親からの励ましを感じたものでした。

 そのような、鉛筆を削る体験を、改めてしてみました。カッターナイフを前に押し出すのではなく、鉛筆を手前に引くことがコツです。静かな中に、シュッ、シュッと、心地よい音が聞こえます。木からはよい香りがしてきます。美しい削り面をつくろうとすることで雑念が消え、心が落ち着きます。すると、子ども時代に、親や祖父母から削ってもらったことを思い出しました。削り終えた鉛筆には愛着がわきます。この鉛筆で何かをしたいという意欲もわきます。それが、体験の第一ラウンドでした。そして、第二ラウンド。みんな、それぞれの使い道を考えました。

そこで、わたしも何をしようかと考えました。わたしも、ちょっぴりの勇気を出してみることにしました。そして、部屋の本棚にある木彫りの観音様の絵を描くことを思いついたのでした。思えば、数年前、池袋駅の構内の出店で売られていた観音様でした。そのとき、心に感じるところがあり、買って帰ったのですが、以来、本棚に置いたままで、ほこりをかぶっています。今まで、観音様の絵を描くなどという大それた考えをしたことはありません。しかし、その殻を破ってみるのも、体験の妙を知る手がかりになるかもしれないと思って、描いてみることにしました。

以来、一週間に、一回描き、写真を撮り、メルマガで配信することにしています。そうすることで、めんどうなことにも、あえて、挑戦することができます。

始めのころは、何としても仕上げなければという悲壮感が先に立ちました。よろこびを感じる余裕はありません。半日かかることもありました。

四回目から、気持ちが楽になりました。そのときも6時間ほどかかったのですが、時間のたつのを忘れていました。そして、目標を設定する余裕もできてきました。うまく描く、のではなく、「威厳」と「やさしさ」とを表そうと。

ところが、描いてみてわかったことは、威厳を出そうとすると、顔はけわしくなるということです。それでは、やさしさからは離れてしまうのです。「威厳」と「やさしさ」、この二つをあわせ持つことは、難しいことでした。それは、人の生き方にもいえますが、それを描き出そうとして初めてその難しさがわかるのでした。ここに、体験することの大切さがあるようです。してみて、わかるのです。しかも、目標があると、いやにはならず、何度も繰り返すことができました。そして、今の段階では、これくらいでいいかなと、くぎりをつけることができたとき、うれしくなりました。

また、自己流ですが、鉛筆の芯の使い方や消しゴムの使い方に、いろいろな表現方法があることもわかってきました。自分で試すことで、いろいろな工夫をして、その効果を知ることができます。思わぬ発見があり、鉛筆に感謝です。そして、来週も、がんばってみようという、意欲がわきました。

上の写真は、最新の絵に更新。

みなさんも、鉛筆を削り、その鉛筆を使って、何かに取り組んでみましょう。小さなことで、うれしいことが起きます。続けることで、苦労も喜びになります。地道な体験によって、心は育ちます。

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