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渡邉達生の研究室便り

田植えの終わった田んぼで

2012/06/21

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各地で、田植えが行われたことでしょう。
6月の、ある週末、故郷に帰り、田植えをして来ました。夕方になると、田植えの終わった田んぼの中に夕日が落ちて来ました。昔から続く、この時期にしか見ることのできない景色です。まさに、一幅の絵でした。見ていると、子どものときの光景が思い出されて来ました。

子どものころの田植えは、トラクターや田植え機のない、多くの人が集うイベントでした。田んぼには長い綱がはられ、その綱にそって多くの人が並び、綱につけられた目印の位置に苗を植えていくのでした。
「いいよ~」「つぎ~」。
田んぼの両側にいるふたりが、号令を出しては綱を動かします。すると、綱に沿って並んでいる多くの人たちがそれに合わせて動き、広い田んぼに苗を植えて行きました。自分は仕事が早くできるからといって、自分だけで仕事を進めることはしません。人の動きに対応して進めていくのです。見ていると、悠長な進み方です。めいめいにさっさと進めて行けば、もっと早く済むのにと、子ども心に思ったことがありました。

しかし、今、違う観点に気づきます。仕事は済ませればいいのではなく、仕事をしている、その最中を、いかにゆとりを持って過ごすのか、ということが、大事なことだったのでしょう。

仕事を早く終わらせても、仕事の終わりはありません。仕事をこなすことを目的にするのでは、エンドレスコースを動く労働マシンになってしまうのです。やがては、仕事をすることが強迫観念となってくることでしょう。それでは、生きることの喜びは、おあずけ、となってしまいます。
そうではなく、人に合わせ、人にゆだねながら仕事をすることで、自分ひとりでかかえる悲壮感や切迫感はなくなります。人といることは、基本的に楽しいことです。みんなと、田んぼの泥や水に足をつけると、楽しさを感じることでしょう。そして、仕事には喜びを感じるでしょう。当時の大人たちは、そのような心境にいたのではないか、と思ったのでした。

これは、今の、働く現場でもいえることです。仕事をすることが苦しくなったら、人にゆだね、人に合わせて進めることで、心にはゆとりが生まれます。それでいいのです。自分の生かす命は、自分なのですから。

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