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渡邉達生の研究室便り

きれいな目をした人たち

2012/10/09

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10月5日の深夜、東京駅の前から、東日本大震災復興支援ボランティアのツアーバスに乗り込みました。家族連れ、高校生グループ、若い人、熟年の人、会社帰りの人など約40名の方々と共に、深夜の東北自動車道を北上。翌朝、9時ごろ、宮城県七ヶ浜町に到着。その日の、午後二時過ぎまでの、半日でしたが、同じバスに乗り合わせた方々と共に、田んぼの中にある、「田んぼの中にあってはならない物」を回収する活動に従事しました。そう、「瓦礫(ガレキ)」とは言わないのでした。

 ここは田んぼでした。しかし、津波がいろいろなものを運んで来て、置き去りにして行きました。まずは、大きな物は機械で取り除いたそうです。しかし、小さな物は人力で拾うしかないのです。しかも、地面の中に埋まっているものもあります。いったん、地表をきれいにした後も、機械で地面を掘り返しては、地表に現れたものを人が拾う、ということをくり返してきたとのことでした。わたしたちが行ったとき、地表はきれいになっているかのようでした。でも、歩いてみると、いろいろなものがありました。板切れや石にまじって、陶器のかけら、CD、くつした、造花などが地面に顔をのぞかせていました。お世話をしてくださった方が言いました。

津波が運んで来たものを、普通の人は「瓦礫(がれき)」と言う。しかし、それらは生活の一部であった物。だから迷惑な物とは思いたくない、自分たちがつかっていた物で、一つ一つに愛着がある。だから、この田んぼから拾い出すのは、「田んぼにあってはならない物」を拾い出すのだと。

失意の中で、果てしのない作業をくり返しながらも、このように自分を見失わないでいる姿に心を打たれました。集まった方々も、互いに面識はないのですが、時おり会話を重ねては、おだやかな雰囲気で時間が経過しました。みんな、きれいな目をしていました。

それにひきかえ...わたしは...。二時を過ぎ、道の上から、終わりの声がかかったときのことでした。そのとき田んぼの中の方に居たわたしは、バケツの中に、握りこぶしがふたつほどの大きな石が三個と、他にもえる物をたくさん拾い集めていました。見ると、燃える物の土のうが閉じられようとしています。大急ぎで、道にあがると、バケツから石を三個出して道端にボトン・ボトンと落とし、土のうのところに行ってバケツの中の物を入れました。そして、先ほどの石を見ると、白髪の老人の方が、その石を拾い不燃物用の土のうに入れてしばっていたのでした。わたしは、まだまだです。

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