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渡邉達生の研究室便り

「昔話と道徳」後悔と明るさ

2015/10/25

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10月22日の授業「昔話と道徳」のテーマは、後悔、でした。その授業を終え、後悔をテーマにした昔話は、黒雲の中に青空を見せてくれるようなもの、ではないかと思いました。暗いけれどその中に明るさが光るのです。(上の写真は、昨年、田舎で撮ったものです。)

後悔は後で自分の愚かさを悔いること...後で悔いても仕方が無いのですが、悔いるのです。嫌な気持ちになるのに、なぜ悔いるのでしょう。「前」だと悔いないか? ン? ということは、後だから悔いる? どうしたいの? 前に行きたいの? そう、愚かさを知り、それを乗り越えて前に行きたいから悔いる、と考えられます。それは前向きに生きようとしている、ということの裏返し。いいことです。悔いることは、嫌になることですけど、いいことなのです。そのいいことに力を与えてくれるのが明るさ。だから、昔話。

お話を読んでいて、「ああ、この人は、なんて愚かなことをするのか...」「だからだめなんだ」と思う。その裏には、ものの道理をわきまえた考え方を支持する気持ちが自然に生まれています。自分のことを悔いると、自分で自分のダメ出しをするようで嫌になりますが、お話の中の人物が愚かなことをしていると、そんなことをしてはダメだ、そんなときには、こうしたほうがいい、と思えます。野次馬でしょうか。自分のことは棚にあげているのです。が、そこのところが大事なことのような気がします。自分はつらくないです。そして、おもしろく思ったり、感心に思ったりします。愚かなことは愚かなこと。でもその愚かなことが笑いを取るのです。笑いを取ることで、陰湿さはなくなります。愚かなことからも明るさにつながる、人生の奥の深さを知ることになります。

わたしは、今回のお話の中では「みょうが宿」が好きです。何だか落語にありそうな話でした。欲の皮がつっぱると、こんなことに。宿屋の主人は、最後には「あ~あ」と、身の愚かさを嘆いたことでしょう。でも、その持ち前の明るさの中で立ち直れそうです。だから、いいのです。また、お地蔵様も正直な人にウソをついて後悔するという「地蔵浄土」も、既成の枠を越えていて、おもしろいです。こうでなくっちゃ。  

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